冠婚葬祭や成人式、お茶会などフォーマルなシーンでは、日本人なら必ず一度は「着物(和服)」を着たことがあることでしょう。中には、特別な日のために新着を拵えた方もいるのではないでしょうか。
しかし、普段着ではあまり着る機会の少ないだけに、クローゼットや箪笥の奥に保管したまま、久しぶりに出してみたら昔のように着られない!なんて話もよく聞きます。
昔より大きくなったために幅が合わない、丈が短いといったサイズにまつわること。また、手入れを怠って長年放置していたために、いつの間にかシミや汚れが出来ていた。若いころ買ったので、今の年齢になって着るには派手過ぎて似合わないかもしれない・・・など、思い当たることが多いはず。
そんなときは”着物のお直し”をしてみましょう。着物は高価な物ですから、大事に使って着こなしたいものです。今挙げたような事例であれば、職人の手でReborn(再生)が可能。では、再生の事例を見ていきましょう。
今回、ご協力いただいたのは、手描き友禅作家の笠原さんです。

1. 留袖直し(幅出し)

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太って幅が合わなくなった時、着物は脇をほどいて幅出しをしますが、柄が切れてしまいます。これはその埋める再生作業。まず、柄の途切れた部分を埋めて繋げます。空いてしまった黒い部分に一度白を塗り、その後に周りと同じ色を作って色を差し、全体のバランスを見て繋げます。まず、どういう形に持っていくか、これを考えるのはとても楽しい時間です。

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これも留袖の幅出しによって出来た空間を埋める作業です。
上の部分は、ぷっつり切れた人間や牛を増やしたりして柄を繋げ、下の部分は屏風が重なったように描きました。

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幅出しをすると、このように空間ができます。
直線で出来た柄なので、飛び出た部分に周りにある梅の花を描いて再生しました。

「どこを直してくださいとお願いしましたっけ?」とご依頼主様から言われるのは一番嬉しいです。

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出来てしまった空間に、二羽が重なったように描いたり、新しい鶴を描いたりしました。
どのように繋げればいいか?を考えるのは楽しく、完成した時は最高な思いです。

2. 訪問着直し(幅出し)

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留袖同様、こちらも幅出しのために空いた部分を繋げたものです。
全く同じ色と同じ雰囲気を出して埋めるのは難しい作業です。

3. 訪問着直し(シミ、汚れ直し)

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シミ汚れ部分を柄などで隠します。周りの色や柄、全体のバランスを考えて、萩の葉を描きました。
萩の白い葉にもシミ、汚れがあるので、胡粉で直しました。

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胡粉(白)と金銀は一番シミ、汚れが多く出ます。
白でも胡粉で塗っただけだと、真っ白になってしまい、そこだけ浮いてしまいます。そのため、胡粉を塗った後、周りに合わせて少し生成のように色をかけます。

4. 付下げ直し(色を地味に)

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若い頃着ていた着物が派手になって着られない。もうちょっと地味になれば着られるのに・・・。
そういう着物は多いと思います。こちらは「花のピンクを地味にしてください」とのご依頼でした。

「これなら一生着られます」と大喜びしてくださいました。

手描き友禅とは?

江戸時代から伝わる技法で、手作業で布に模様を染めていきます。
友禅染めでは、染料のにじむのを防ぐ防染糊(もち米で作る糊)と筆や刷毛を用いて絵を描くようにして染めます。手描き染めの技術を生かして、多彩かつ繊細に表現出来るという特徴があります。
上記の事例は、無線友禅という糸目糊を使わずに生地に直接絵筆で絵柄を描いて彩色する技法を用いています。糸目糊による防染が出来ないので、淡くにじんだような柔らかな表現が可能です。

職人・作り手プロフィール

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笠原以津子(かさはら・いつこ)
神奈川県横浜市出身。東京都中野区にて3年間、無線友禅を師匠の下で修業。修業を終えた後、さらなる技術向上のため、新宿区在住の伝統工芸士から、糸目友禅を学ぶ。その後独立、荒川区伝統工芸保存会に所属。読売文化センター各地で友禅の講師就任。東京都青年の部卓越技能賞受賞、東急百貨店にて個展開催、2014年パリ・ジャパンエキスポに出展。