「祖母や母の形見の螺鈿や蒔絵の櫛と笄の修理をしていただけないでしょうか?」とご依頼をいただきました。思い出が詰まった品物です。これまで関東や漆器の特産地に赴き、職人さんに依頼をしたところ、「今は扱っていないので・・・」と断られ続けてしまい、手しごと再生工房「RebornArt」に駆け込まれたのです。

わたしたちはご依頼者様とお会いして、品物の現況を確認。作られた時代によって、素材もまちまちです。依頼品を分解すれば詳細を確認することはできますが、傷を与えることは修復をさらに困難にしてしまう危険があります。アドバイザーと職人さんとともに、当時の時代考証をしながら、品物が何で作られてどのような技法が施されているのか?を丁寧に観察し、修繕・修復ポイントについてまとめていきました。

今回は参考として、依頼品をお見積もりするまでの考察をご紹介します。

 

依頼品は大正時代と昭和初期に制作

表と裏

こちらは、ご依頼主様のおばあ様の形見の品「櫛(くし)」と「笄(こうがい)」のセットです。大正時代に購入されました。

素材は鼈甲(タイマイ)と思われますが、水牛の角の可能性も。類似している素材かもしれません。

櫛(くし)は銅粉を使用しているため、腐食して緑青が出ていました。蒔絵の中心部分には、ヒビがかなり入っていますが、強度はしっかりしています。本体はもともとは、このように緑がかっていませんでした。こうした色味になったのは、ご依頼主様が重曹などで磨いたため。漆が剥げてしまったのは、ごく最近とのことでした。

表と裏

もう一セットのこちらは、お母様の形見の品です。昭和初期に購入されました。

残念ながら、所見だけでは素材の特定はできませんでした。螺鈿の技法であることは確かです。

写真で見る修復・修繕ポイント

ご依頼品のどこが修復・修繕箇所なのか?写真で見てみましょう。

まずは、おばあ様の形見の品から。櫛の考察です。

こちらは笄の考察です。

続いて、お母様の形見の品。こちらは櫛の考察です。

続いて、笄の考察。

修復方法について

わたしたちは、上記の考察から修復方法について話し合い、レポートにまとめてご予算に合わせて3パターンの修復方法について提示しました。

鼈甲(べっこう)の割れ部分は、そのままにして修復します。漆を割れの部分に塗ると、ヒビの部分に漆が多少は入り込むので、強度は現状よりは強くなります。
鼈甲は、かなり割れが入ってしまっているため、修理する過程の環境の変化(温度・湿度など)で完全に割れる可能性があります。割れた場合は、漆で接着します(割れた方が、漆で接着するので強度が強くなります)。

※鼈甲は自然素材(タンパク質)のため、経年劣化します。修復中に割れることがあります。

以下、修復方法3パターンについて。

《パターンA》割れ・かけのみの修復

《パターンB》Aに加えて、螺鈿の欠けた部分に新たに螺鈿を貼る。さらに、貝と漆面の段差部分を下地でなだらかにし、その下地部分にさらに漆を塗り継ぐ。

《パターンC》AとBに加えて、漆面を研ぎ出し磨く。ほぼ新品同様の綺麗さ。

結果、ご依頼主様は「パターンC」を希望されました。「せっかくなので、元の姿を取り戻したい!」とのことでした。

※ご参考までに、お見積もり額を記載します。
《パターンA》39,000円+税金、《パターンB》104,000 ~130,000円+税金、《パターンC》169,000 円+税金


上記は一例です。ご依頼主様のご希望に合わせて、お見積もりを行っています。
関東近郊については出張でのお見積もり、それ以外のエリアにお住まいの方には品物をお預かりしてお見積もりを行っています(※出張にかかる往復交通費、品物の往復発送費はご負担いただきます)。

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