大正13年(1924年)創業の襖(ふすま)紙工場・株式会社菊池襖紙工場(埼玉県・草加市)を訪れ、伝統工芸室の山本さん、青柳さんに「手しごとのふすま紙」についてお聞きしました。
菊池襖紙工場は、伝統工芸手法の装飾から大型機械を用いた高速印刷など、幅広いインテリア商材を揃えています。

1か月半かけた山水画ふすま 鮮やかな風景浮かぶ

suibokuga

菊池工場に入った直後に案内されたギャラリーには、伝統工芸手法で作られた芸術的なふすま紙が展示されていました。写真(上)は、伝統工芸室の山本さん作で、約1か月半かけて作られた大作の山水画のふすま。個人のお客様のご要望で、制作されたとのことでした。

ふすま紙には、全体にデザインを施された「総模様」と下半分のみの「腰模様」の2種類があります。こだわりのふすまは、黒い引き手の部分に漆を塗って仕上げることもあるそうです。

現在、ふすまのデザインは見本帳を元に図案を決め、製版を経て印刷をする工程がほとんどです。
菊池襖紙工場では図案を忠実に再現するために、複数の製版技法を用いて掛け合わせながら、手間暇かけて制作されていました。

seihan

わたしが見学したのは、写真(上)の「ゴム(スポンジ)版」「樹脂版」「PS版」「スクリーン版」の4種類。ふすま紙の繊細な色の濃淡などを出すために、それぞれの版の特徴を生かして制作されています。

昔の絵画や職人画をふすま紙に用いる場合には、写真(下)の「製版カメラ」という巨大な機械を使います。絵をフィルム化して、ネガやポジにします。この「製版カメラ」は全国でも片手で数えられる台数しかない、大変貴重な機械とのこと。

camera

camera02

最後は印刷工程。別棟の広い敷地を有する印刷工場で、刷り上げます。すべて機械任せではなく、担当者が目視でチェックをしていきます。瞬きすると思わず見逃してしまいそうなほどのスピード感の中で、「刷り上がったふすま紙が仕上がりイメージと相違ないか?」を淡々と確認されていました。

菊池襖工場には、生産を支えるさまざまな機械がありますが、創業者自ら製作した機械もありました。効率的な生産をするために生み出す機械はほかに類がなく、発明するしかなかったとのこと。工場の機械一つ一つに、職人魂が宿っているのを感じました。

伝統の金銀砂子細工 技術を継承し新製品を製作

kingin

上述したふすま紙の製作とは別に、菊池襖紙工場「伝統工芸室」では、山本さんと青柳さんら職人が一つ一つ手作業で制作する”逸品”も手掛けています。

写真(上)の「金銀砂子」細工の実演も見学しました。歴史的建造物の寺社仏閣には、きらびやかな「金銀砂子」細工を施すふすまを目にすることがありますが、一般家庭のふすまではなかなか見る機会が減っています。

もちろん現在でも、「金銀砂子」細工などの伝統技法を使ったふすま紙も制作されていますが、「日本の伝統的な技法を用いて、現代のライフスタイルに合う新たな製品を作りたい」と、山本さんら伝統工芸室では新製品の開発にも力を注いでいます。

現在手掛けている一例が、壁に展示できるコンパクトなパネルや写真(下)のギフトボックス。ギフトボックスは米国企業の発注で生産されています。贈り物としてチョコレートを入れる美しい包み箱として活用されているそうです。

box

菊池襖紙工場では90名のスタッフが制作に携わっています。現代のニーズに合わせたインテリア製品としての壁紙・ふすま紙から、伝統工芸手法によるふすま紙まで、多種多様な商品ラインナップを揃えていました。

「伝統工芸室」という部署を設置され、残すべき技術を受け継ぐ職人さんの手しごとにも触れ、ふすまの魅力を改めて感じた工房見学でした。

日本ふるさと手しごと協会より

一般社団法人日本ふるさと手しごと協会が運営する「手しごと再生工房”RebornArt”」では、工芸品・民芸品などに用いる素材や原材料を生かし、長きに渡って日用づかいされるための修繕修復(リノベーション)のご相談を承っております。お気軽にご連絡ください。