割れてしまった大切な器を、金を使って修理する”金継ぎ”という日本の伝統的な修復技術があります。接着には漆を用いて、仕上げに金粉を施します。
思い出の品、貴重な品を元の姿によみがえらせつつ、”金”の彩りが味わい深さを演出します。

今回、ご協力いただいたのは、漆芸・金継ぎ作家の中村さんです。

割れてしまった大切な器を修復させたい!

普段大切に扱っている器を、予期せず落としてしまったり傷つけてしまったりして、破損させてしまうことも少なくありません。

上記のように、真っ二つに割れてしまった・・・なんていう時は、あきらめてしまいがちです。
しかし、日本には古くから”金継ぎ”という修復技法があります。現在では、”金継ぎ”は海外でも広く知れ渡っています。”金継ぎ”による修復技法とは何なのか、解説していきます。

漆を使い、小麦粉と水で接着剤を調合

破片同士の接着剤としての漆の調合「麦漆」を作ります。
配合は小麦粉を水で耳たぶの柔らかさに練ったものに、同量の生正味漆(日本産生漆)を、混ぜムラがなくなるまで合わせます。

接着断面に、竹箆で麦漆をできるだけ薄くムラなく塗った後、放置します。
麦漆の中に硬化反応に必要な酸素が吸収され、色味が黒く変化します。

接合作業は、麦漆の表面がペトつく程度の硬さになってから断面を貼り合わせます。しっかりと、ズレないように破片を圧着させると、余分な麦漆が押し出されてくるので、出なくなるまで続けていきます。
気温約20度、湿度約70パーセントの風が通らない場所に1週間ほど安置すると硬化します。

“錆漆”で接合面の小さな欠けを埋める

接合面の小さな欠けを埋めるための充填材として、漆の調合「錆漆」を作ります。
配合は砥の粉に水を滴下し、涸(か)れたあんこのような硬さに練ったものに、見た目同量より少なめ(7〜8割)量の同量の生正味漆(日本産生漆)を、混ぜムラがなくなるまで手早く合わせます。

接合した部分の凹みに錆漆を竹箆などで埋め、気温約20度、湿度約70パーセントの風が通らない場所に一昼夜安置し硬化させます。
硬化したら、様子を見て凹みが埋まるまで繰り返します。

硬化した錆漆を、木賊(トクサ)を使って平滑になるように注意深く研ぎます。
木賊は耐水研磨紙のように、研磨剤粒子で釉薬を傷つけるようなことはありません。

金粉を用いてなじませる最後の仕上げ

金粉蒔き付けは、まず地塗りを塗り残しがないように施し、気温約20度、湿度約70パーセントの風が通らない場所に20分前後安置します。
表面が半乾きになるまで待ち、金粉(純金丸粉2号)を蒔きます。葦筒に紗を張った篩「粉筒」と箒のように粉を掃いて寄せるための筆「あしらい毛房」を使って金粉を地塗りに付着させます。
気温約20度、湿度約70パーセントの風が通らない場所に一昼夜安置し硬化させます。

2016/11/金粉漆固め拭き取り

余分な金粉をあしらい毛房で慎重に払ったあと、固め漆を金粉の上に筆でなぞるようにして染み込ませます。

余分はティッシュで押さえて取った後、気温約20度、湿度約70パーセントの風が通らない場所に一昼夜安置し硬化させます。
この工程を3回繰り返すと金粉がしっかりと地塗りに定着します。

2016/金粉磨き

地塗り面に固められた金粉は粒子感があるので、面一になるように磨きます。
まずは柔らかな砥石、続いて油を付けた指に砥の粉をつけてこすると徐々に金が光り出します。綿のネル生地で擦ると効率的に仕上げることができます。

巻頭画像/完成

職人・作り手プロフィール

中村真(なかむら・まこと)
東京芸術大学大学院漆芸専攻修了後、同大学工芸科漆芸研究室勤務を経て、 2005年から文化庁新進芸術家在外研修(ウズベキスタン共和国)として3年間、タシケント(ウズベキスタン)の民族楽器工房にてシルクロード中央アジアの伝統木工を学ぶ。現在は千葉県松戸市に工房を構え、瓢箪(ひょうたん)、木、乾漆などの漆のうつわを中心に制作活動。主な受賞に、財団法人日本漆工協会漆工奨学奨励賞・「朝日現代クラフト展」グランプリ他。